2022年5月14日 インターネット配信
【訳】
きっとみなさんも経験したことがあるだろうと思います。
みなさんが誰かと仲良くなり、友情を育んだとします。共通の趣味を持ち、会話がはずむこともあるとしましょう。そうしたときには、『自分と友人の間には良い信頼関係がある』と認識できると思います。
しかし、〔そうではない〕何かが起こる場合もあります。
もしかしたら、不信感を抱くような瞬間であるかもしれません。やり取りの行き違い(ミスコミュニケーション)かもしれません。〔これまでは〕お互いの友情に調和があったのだけれども、今は不和が入り込んでしまっているような状態です。〔これまでは〕平和であったのに、今は溝ができてしまったという状態です。
〔それでも、〕もし〔お互いの〕関係に変化の余地があり、癒しの望みが残されているのであれば、〈和解〉が必要です。
*****
個人的な人間関係が壊れてしまうならば、社会的な関係までも壊れてしまう可能性があります。
この数年、わたしたちは、人種の異なる人々、社会の階層が異なる人々、また、性的なアイデンティティーが異なる人々の間に生じる緊張について意識するようになりました。わたしたちは、社会の対立によって不信、猜疑心(さいぎしん)、あげくの果てには暴力さえ引き起こされるような世界に生きています。
〈和解と平和〉は容易には得られません。
*****
キリスト教会も、このような〔世の中のの〕緊張と無関係ではありません。ただし、キリスト教会の核心となる部分には、「神はキリストによって世を御自分と和解させ」てくださったという信仰があります(コリント二5章19節)。
わたしたちは、イエスの生涯、彼の死と復活を通して、神を知ることができるようになりました。その神とは、〈和解によって平和をもたらされる神〉です。神は、ご自分と人間との関係、また、人間同士の関係を回復するために、率先して行動してくださいました。
使徒パウロは『エフェソの信徒への手紙』の中で、ユダヤ人と異邦人の間にあった民族的な緊張に言及し、〈和解〉の規模を広げています。
実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました。こうしてキリストは、双方を御自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架を通して、両者を一つの体として神と和解させ、十字架によって敵意を滅ぼされました。(エフェソの信徒への手紙2章14~16節)
神はこの世界を愛しておられるがゆえに、キリストによって、わたしたちをご自分と和解させてくださいました。そして、平和をもたらす和解のメッセージをわたしたちに託しておられるのです〔参照 コリント二5章18~20節〕。
*****
救世軍が発表した『平和に関する国際的な見解表明』は、「敵意が存在してきたところにおいて、持続可能な平和に大きく貢献するのは、真実と正義に基づく和解である。その和解には、赦しを押し広げること、また、赦しを受け入れることが含まれる」と述べています。
ここで、わたしの母国〔カナダ〕の例を取り上げましょう。
しばらく前、カナダの先住民の代表がローマでフランシスコ法王と会見しました。カナダが国家として成立したのは1867年のことです。当時の指導者たちは、先住民のアイデンティティーを消し、〔自分たちに〕同化させようと行動しました。そのために、『子供たちからインディアンの部分を取り除くこと』を掲げる寄宿舎学校が建設されました。そして、この取り組みを達成しようとする上で、教会が重要な役割を果たしました。
しかし、この一年、カナダではこのような不正の犠牲となった子どもたちの墓が多く発見され、人々は衝撃を受けています。〔このような出来事によって、〕深い傷が残っています。
フランシスコ法王は先住民の代表と会うことを承諾し、さらに、彼らに赦しを求めました。それはまさに〔和解の〕始まりといえるものでした。和解は、一歩ずつ前に進みます。また、和解は真実によって前に進みます。
*****
わたしたちの多くは、「真実と和解」の取り組みがこれまで行われ、また、現在も行われているような国々に住んでいます。
〔その一方で、〕わたしたちが奉仕している国の中には、人々がめいめいに集団を作り、社会の中で断層のように〔相容れず、交わることのないまま並存する状態に〕なっているところもあります。
和解の務めに貢献することは、わたしたち救世軍人の使命(ミッション)です。
どうか神がわたしたちを導いてくださり、恵みに満ちた聖霊を伴(わせてくださいますように。
そして、わたしたちが、和解をもたらす神の愛を体現するものとなることができますように。
また、神の助けによって、わたしたちが、和解によってもたらされる平和を生み出すものとなることができますように。
小隊や個人の祈りの手引きとして、ブライアン・ペドル大将がインターネットで発信されたメッセージを翻訳し、紹介します。日本語の読みやすさを考慮して日本語を補った箇所があり、それについては〔 〕で区別しています。(訳 立石真崇)